埋伏歯|永久歯が生えてこない。埋伏歯ってなに?放置しても大丈夫?

   

こんにちは。綾瀬駅前のメリー歯科です。
前回、永久歯がなかなか生えてこない「永久歯の萌出遅延」についてお話しさせていただきましたが、本日は、永久歯が歯茎に埋もれて出てこれなくなってしまっている「埋伏歯」についてお話しさせていただきます。

 

埋伏歯とは

埋伏歯とは、永久歯が顎の骨の中に埋まったまま生えてこない状態の歯のことを言います。
埋伏歯は萌出遅延との区別が難しいとされていますが、歯根の形成がまだ完成しておらず、今後自力で生えてくる見込みのある「萌出遅延」に対し、歯根の形成が完成しているにもかかわらず未だ萌出していない、今後も自力で出てくることが難しい歯を「埋伏歯」と呼び、区別しています。

埋伏歯は、顎の骨の中や歯茎の下に完全に埋まっている「完全埋伏歯」と、歯冠の一部が外に出てる「不完全埋伏歯」に分けられますが、完全埋伏歯の場合は目で確認することが出来ず、また症状や違和感もないことがほとんどのため、発見されずに放置されているケースも多々あります。

埋伏歯の位置や状態によっては、放置しても問題ないケースもありますが、他の歯に悪影響を及ぼす可能性のある場合はなるべく早めに処置をしてあげる必要があります。

 

埋伏歯になりやすい歯は?

犬歯(糸切り歯)

犬歯は、永久歯の中でも比較的最後の方に生え変わりが行われます。
そのため、歯が生えるスペースが不足してしまい、正しい位置に生えてこれずに埋伏歯となるケースがあります。

日本臨床矯正歯科学会によると、上の犬歯が埋伏する頻度は約2%で男性より女性の方が多いとされ、そのうち約78%は隣の歯に悪影響を及ぼしているとのデータも発表されています。

犬歯には、噛み合わせや下顎の位置を定める大切な役割がありますので、犬歯が無くなると下顎の位置が不安定になって噛み合わせの位置が定まらなくなり、顎の動きも安定しなくなります。
また犬歯は、歯根が非常に長くて太い歯ですので、その歯が無くなると歯茎がくぼんだようになり、審美的な問題も生じてしまいます。

そのため、犬歯が埋伏歯となっている場合は埋伏している歯を引っ張って出す牽引処置を行い、歯を正しい位置に誘導する治療が必要となります。

親知らず(智歯)

親知らずは、埋伏歯で一番多いと言われている歯で、埋伏歯の中でも特に親知らずの埋伏歯を「埋伏智歯」と呼びます。
親知らずが埋伏歯になっている場合、歯冠の一部が外に出ている「不完全埋伏歯」のケースで特にトラブルを引き起こすことが多く、歯ブラシが届きにくく口腔ケアが行き届きにくいことから汚れが溜まり、炎症を起こす「智歯周囲炎」になりやすい傾向があります。

また、完全に歯茎の中に埋まっている「完全埋伏歯」の場合は、他の歯に対して悪い影響を及ぼしていないケースではそのままにして治療をしないこともありますが、現在は他の歯に悪影響を与えていないけれども将来的に悪影響を与えてしまうことが予想される場合は、抜歯治療が必要となります。

抜くべきかどうかの判断は口腔内の状態にもよりますし、歯科医師によっても治療方針が異なるケースもあります。
親知らずがある場合、まずはかかりつけの歯科医院に相談し、治療方針に不安や疑問がある場合はセカンドオピニオンなども利用してみると良いでしょう。

 

埋伏歯が他の歯に与える”悪影響”とは?

埋伏歯は、不完全埋伏歯のケースはもちろんのこと、痛みや症状のない完全埋伏歯の場合であっても、他の歯に悪影響を及ぼす可能性があります。

不完全埋伏歯の場合

歯冠の一部だけが外に出ている不完全埋伏歯は、特に親知らずの部位で起こりやすいですが、半埋伏の親知らずは歯茎が覆いかぶさっていたりして歯ブラシによる清掃が届きにくく、虫歯や歯周炎になりやすいというリスクがあります。

虫歯

その埋伏歯にできる虫歯だけではなく、埋伏歯に隣接した歯にも虫歯が出来てしまう可能性が高くなります。
特に親知らずの場合、手前の第二大臼歯の歯根と接触していることが多く、そこで虫歯ができると気づかないうちに歯根から虫歯になってしまうため、虫歯を発見した時点で抜髓や抜歯をせざるを得ない状態になっていることが多々あります。

【虫歯が発生しやすい場所】
  • かみ合う歯の面の上に歯肉が覆いかぶさっている部分
  • 隣の歯と接触している部分
  • 隣の歯と接触している箇所の陰に隠れる部分

 

周囲炎(智歯歯周炎)

歯周炎の中でも特に、親知らずの歯周炎を「智歯周囲炎」と呼びますが、智歯歯周炎は症状が重くなると、傍から見てもわかるほど頬が腫れたり、発熱といった症状が生じる場合があります。

【軽症の場合】
親知らず周辺の歯茎が腫れ、うずいたような痛みが生じます。
また、歯ブラシの時に患部に触れると痛い、膿が出るなどの症状がある場合もあります。

【中等度の場合】
腫れの範囲が徐々に広がってきます。
食べ物を噛むことがつらくなり、また物を飲み込むこともつらくなってきます。

【重症の場合】
炎症が歯の周辺から顎の骨の周辺や、顔・首周辺にまでに広がり、第三者から見ても顔が腫れているのがわかるようになります。 また、腫れが原因で口が開けられなくなり、発熱・全身の倦怠感が現れることがあります。

 

完全埋伏歯の場合

完全埋伏歯の場合、虫歯や歯周病のリスクはありませんが、他の歯が生えるのを邪魔したり、骨吸収によって他の歯の根っこを溶かしてしまうこともあります。

不正咬合

埋伏歯が存在することで、他の歯にとっての障害物となり、正しい位置に歯が生えてくることができずに不正咬合を引き起こすことがあります。

特に代表的なものが、正中埋伏過剰歯による正中離開と呼ばれるものです。
これは、左右の前歯の間の部分にできた過剰歯が埋伏歯となって骨の中に埋まっていることで、永久歯の前歯が生えてくる障害物となり、前歯左右の歯の間に隙間ができていわゆる「すきっ歯」になってしまった状態です。

過剰歯が障害物になってしまい、他の歯が正しい位置に生えてくることを阻害してしまうケースは他の場所でも見られ、歯の傾斜や転位としてあらわれることもあります。

 

歯根吸収

歯根吸収とは、何かしらの原因によって歯の根っこが溶かされる現象を言いますが、この歯根吸収は乳歯から永久歯に生えかわる際にも起こります。

乳歯から永久歯の生え変わりの際、永久歯は、その上に元々生えている乳歯の歯根を溶かし、乳歯を抜けやすくする働きもしています。
永久歯が正しい位置にある場合は、入れ替わる乳歯の歯根を溶かすことで生え変わりがスムーズに行われますが、永久歯の位置がずれていたり、過剰歯が存在することで、本来歯根吸収されるべき歯ではない歯の根が吸収されてしまい、歯の根が短くなってしまう可能性があります。

歯の根が短くなっても自覚症状は特にありませんが、将来的に歯周病が進行した場合や、加齢による歯肉退縮が起こった場合に、歯がグラグラして早期に抜けるリスクが高くなってしまいます。

 

まとめ

埋伏歯は、放置していても問題ないケースもありますが、違和感や自覚症状がなくても将来的なリスクを抱えている場合が多くあります。
トラブルを引き起こす可能性のある埋伏歯は、抜歯や牽引といった治療法が必要となりますが、いずれにしても骨が柔らかく歯の移動や抜歯がしやすい若いうちに処置をした方が体への負担を抑えることができます。

埋伏歯は、歯科医院にてパノラマレントゲンを撮ってもらって初めて発見されることも多いため、歯の生え変わりの時期には、一度歯科医院にてレントゲンを撮ってもらい、将来的にリスクのある埋伏歯が存在しないかどうか、確認してもらうとよいでしょう。

 



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